「ネガティブ感情」の正しい扱い方:落ち込んだ自分を責めないための受容マインド

​また仕事でミスをしてしまった……

自分はなんてダメな人間なんだ

あの人の一言がどうしても頭から離れず、怒りとモヤモヤが収まらない

将来のことを考えると、不安で押しつぶされそうになる

​日々の生活の中で、不安、怒り、悲しみ、嫉妬といったネガティブ感情が波のように押し寄せてくることはありませんか?

​多くの人は、ネガティブな感情が湧き上がってきたとき、こんな風に落ち込んではいけない、前向きにならなければと、無理やりポジティブに切り替えようとしたり、蓋をして見ないようにしたりしがちです。

​しかし、心理学や脳科学の観点から見ると、ネガティブ感情を抑え込もうとする行為こそが、かえって心を深く傷つけ、ストレスを増幅させる最大の原因であることが分かっています。

​今回は、ネガティブ感情の正しいメカニズムを知り、落ち込んだ自分を優しく受け入れるための受容マインド(セルフ・コンパッション)について解説します。

なぜネガティブ感情を抑え込んではいけないのか?

​私たちがネガティブな感情を嫌うのは、それが不快だからです。

胸が締め付けられたり、頭が重くなったり、やる気がなくなったりする感覚は、できることなら味わいたくありませんよね。

​だからこそ、私たちは無意識に次のような行動をとってしまいます。

  • ​これくらいで落ち込むなんて甘えていると自分を責める
  • ​忙しさに紛らわせて、不安な気持ちから目を背ける
  • ​無理やり笑顔を作って、私は元気だと言い聞かせる

​しかし、心理学にはシロクマの実験(皮肉過程理論)という有名な心理効果があります。

今から『白いシロクマ』のことを絶対に考えてはいけないと言われた途端、脳は逆にそのシロクマのことばかり考えてしまうという実験です。

​感情もこれと全く同じです。

不安になってはいけない、怒ってはいけないと抑え込もうとすればするほど、脳はそのネガティブな感情に意識を集中させ、かえってエネルギーを消耗してしまいます。

​ネガティブ感情は、人間が危険やストレスから身を守るために進化の過程で獲得した大切なアラート機能です。

それを無理にねじ伏せようとすることは、車の警告ランプが点灯したときに、ランプの電球をペンチで引っこ抜くようなもの。

根本的な解決にはなり得ないのです。

感情の「受け入れ」が心をもっとも強くする

​では、ネガティブ感情が湧いてきたときはどうすればいいのでしょうか。

ここで鍵となるのが、心理療法(ACT:アクセプタンス&コミットメント・セラピーなど)でも重視されるアクセプタンス(受容)というアプローチです。

​受容とは、ネガティブなままでいいやと投げやりになることではありません。

今、自分の中で不安や怒りという感情が湧き上がっているなという事実を、評価も否定もせずに、そのまま「あるがまま」に認めることです。

​例えば、雨が降ってきたときになんで雨なんか降るんだ!

晴れろ!

と空に向かって怒っても、雨は止みませんよね。

あ、今は雨が降っているな。

じゃあ傘をさそうと受け入れるからこそ、濡れずに前へ進むことができます。

​感情もこれと同じです。

  • ​今、私はすごくショックを受けているんだな
  • ​怒りを感じているのは、それだけ自分がその物事を大切に思っていたからだ

​このように、湧き出た感情にラベルを貼り、客観的に認めてあげるだけで、感情のトゲがスーッと抜けていくのを感じられます。

ネガティブな感情を敵ではなく一時的な宿泊客のように扱うのが、心を健やかに保つコツです。

自分を親友のように扱うセルフ・コンパッション

​ネガティブ感情に囚われたとき、私たちは自分に対して非常に厳しい言葉を投げかけがちです。

なんでこんなこともできないんだ、もっとしっかりしろよと、心の中で自分を責め立ててしまいます。

​もし、あなたの親友が仕事で失敗して深く落ち込んでいたら、あなたは、お前がダメなんだよ!

と罵倒するでしょうか?

 きっと、よく頑張ったね、少し休もうかと温かい言葉をかけるはずです。

​自分自身に対しても、その温かいまなざしを向けることを心理学ではセルフ・コンパッション(自分への思いやり)と呼びます。

​セルフ・コンパッションが高い人ほど、失敗からの立ち直りが早く、メンタルのレジリエンス(回復力)が高いことが研究で分かっています。

自分を厳しく律して鞭打つよりも、自分を味方につけて優しく労わる方が、結果的にパフォーマンスも上がリやすくなるのです。

ネガティブ感情をエネルギーに変える実践3ステップ

​日常の中でネガティブな波が押し寄せてきたとき、心を整えるための具体的な3つのステップをご紹介します。

ステップ1:感情に名前をつけて「実況中継」する

​不安や落ち込みを感じたら、まずは頭の中でその感情を実況中継してみます。

  • ​あ、今、私の中で『焦り』の感情が暴れているな
  • ​『自己否定』のモヤモヤが湧いてきているぞ

​感情と自分自身を同一化するのではなく、あ、今そういう天気(感情)なんだなと一歩引いて観察(脱フュージョン)することで、感情の波に飲み込まれにくくなります。

​ステップ2:「人間だから当然」と普遍性を思い出す

​ネガティブに陥ると、こんな風に悩んでいるのは自分だけだ、自分はなんてメンタルが弱いんだと孤立感を抱きがちです。

しかし、不安や怒り、悲しみは、地球上の誰もが経験する人類共通のシステムです。

  • ​今、この瞬間も、世界中で同じように悩んでいる人がたくさんいる
  • ​人間なんだから、落ち込むこともあって当たり前だ

​そう思い出すだけで、孤独感による二次的なストレスを和らげることができます。

​ステップ3:自分をなだめる身体へのアプローチ

​思考や感情だけでモヤモヤを何とかしようとすると、かえって泥沼にはまることがあります。

そんなときは、物理的な身体の感覚を利用して神経系を鎮めましょう。

  • ​温かいお茶をゆっくり飲む
  • ​深呼吸を数回繰り返し、息を吐くときに体の力を抜く
  • ​自分の胸や肩にそっと手を当てて、大丈夫だよと心の中で声をかける

​身体の緊張を緩めることで、脳の戦闘モード(交感神経)がオフになり、自然と心が落ち着きを取り戻していきます。

​まとめ:どんな自分であっても、まるごとマルをあげよう

​私たちは、いつも笑顔で、前向きで、生産性の高い理想の自分でいなければならないという呪縛に囚われがちです。

​しかし、人間には波があります。

晴れの日もあれば、激しい雨の日や、どん曇りの日もあるのが自然の摂理です。

ネガティブな感情は、あなたの心が壊れている証拠ではなく、むしろ懸命に生きようとしている証そのものです。

​落ち込んでもいい。

不安になってもいい。

どんな状態の自分であっても、今はこういう時期なんだなとまるごと受け入れてあげる。

​その優しい受容マインドこそが、どんな逆境でも折れない、本当の強さをあなたに運んできてくれるはずです。

今日、もし少し心が重くなったら、まずはご自身の肩を優しくなでてあげてくださいね。

​筆者のひとりごと

​ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

​ネガティブな感情を否定しないって、頭では分かっていても、いざ自分がめちゃくちゃ落ち込んだりイライラしたりしているときは、なかなか実践できないものですよね(笑)

私自身、あー、またネガティブなこと考えちゃった最低だと、ネガティブになっている自分をさらにネガティブに責めるという無限ループに陥ったことが何度もあります。

​でも、あるとき人間だもの、機嫌が悪い日も、不安で押しつぶされそうな日もあるよねと、諦め半分・優しさ半分で自分を許せるようになってから、すごく楽になりました。

​感情って、無理やりフタをしても、お風呂に浮かべたボールみたいに、どこかのタイミングでポコンと水面から飛び出してくるんですよね。

だからこそ、暴れる感情を無理に抑え込むんじゃなくて、お、今日は機嫌斜めだね、じゃあ今日はのんびりティータイムでもしようかと、お世話してあげるくらいのスタンスがちょうどいいのかなって思います。

​完璧じゃなくていい。

落ち込む日があってもいい。

あなたのその繊細で頑張り屋な心を、今日も一番近くで優しく労わってあげてくださいね。

​それでは、また!

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