
「掘り出し物だ」——。
そう確信して購入した中古車が、まさかこれほどまでに人生を狂わせることになるとは、その時は夢にも思いませんでした。
市場価格を大幅に下回る低価格。
走行距離は少なく、外装も磨き上げられたその車は、まるで私を待っていたかのようにディーラーの片隅で輝いていました。
しかし、納車初日から、すべてが狂い始めました。
鍵を回した瞬間の異変
深夜、住宅街を走っている時のことでした。
静まり返った車内で、突然スピーカーから「ザッ……ザッ……」というノイズが響き渡りました。
オーディオはオフにしているはずです。

不快な磁気音は次第に人の声のように聞こえ、車内の空気が氷点下まで下がったかのような冷気が私の背筋を突き抜けました。
それだけではありません。
納車から一週間が経つ頃には、私自身の体に異変が現れ始めました。
毎晩のように繰り返される金縛り。そして、心臓を直接握りつぶされるような胸の痛み。
健康診断では異常なしと診断されたにもかかわらず、その車に乗った直後には、必ずと言っていいほど激しい頭痛と吐き気が私を襲うのです。
消えない「轍」の記憶
ある日、整備工場へ車を持ち込みました。
どうしても車内の異臭と、運転中の幻覚が耐えられなかったからです。
熟練の整備士は、エンジンルームを開けた瞬間に顔を青くし、何も言わずに私を事務所へと招き入れました。

お客さん、この車、どこで買ったんですか?
彼の震える声に促され、私は渋々詳細を語りました。
整備士は重い口調で真実を告げました。
その車は、ただの事故車ではありませんでした。
数年前、深い夜の山道でガードレールを突き破り、そのまま谷底へ転落した凄惨な事故の当事車両だったのです。
さらに恐ろしいのは、その運転手が死亡しており、事故から数日経ってから発見されたという事実でした。
車内には、彼が最期まで握りしめていたであろう指の跡が、内装の奥深くにまで深く食い込んでいたそうです。

連鎖する不幸ーー
それ以来、私の周囲では「何か」が起きるようになりました。
大切にしていた指輪が消え、会社のプロジェクトは不可解なトラブルで中止になり、ついには同居していた家族までもが原因不明の高熱で倒れました。
まるで、あの車が持ち込んだ負の連鎖が、私の生活のすべてを塗りつぶしていくかのようです。
私は今、その車を手放すべきか、それともこのまま運命を共にするべきか、深い闇の中で迷い続けています。
もし、あなたが中古車を探しているのなら、一つだけ覚えておいてください。
価格が安いのには、必ず理由があります。
そして、その理由が物理的な故障ではない時、車はただの移動手段ではなく、呪いを運ぶ器へと変貌するのです。

筆者のひとりごと
格安の中古車には、本当に魔が差すとしか言いようがない側面がありますよね。
浮いたお金に目が眩んで飛びついた結果がそのような状態になることもあるようです。
納車されて間もなく漂い始める異臭や、何度アライメント調整をしてもまっすぐ走らない不気味な違和感……。
プロに調べていただいて背筋が凍るようなケースも珍しくありません。
きれいに化粧直しされた修復歴ありの事故車だった場合、前のオーナーは無事だったのかといった不吉な想像ばかりが頭を過ることになります。
安さの裏には必ず理由があるのだと、身をもって知らされるような出来事です。


